ドイツ語教育部会総会
日時:2022年5月7日(土)12時30分~13時00分
会場:立教大学池袋キャンパス B会場(8号館8201教室)
議題:
I 報告事項
1.2021年度活動報告
2.幹事選出細則の改正
3.その他
II 審議事項
1.2021年度決算報告
2.2022年度予算について
3.監事嘱任について
4.『ドイツ語教育』のJ-STAGE公開範囲について
5.その他
III 会員からの意見開陳
ドイツ語教育部会招待講演
2022年5月7日,8日に立教大学で開催される春季研究発表会におきまして,下記の通り,ドイツ語教育部会主催の講演会を実施いたします.
記
講演者:真嶋潤子 (大阪大学名誉教授,ケルン大学客員研究員)
講演題目:「日本の外国語教育への「CEFR−CV(CEFR補遺版)」のインパクト」
日時:2022年5月7日(土)16時40分~18時10分
会場:立教大学池袋キャンパス B会場(8号館8201教室)
※ケルンからのZoom配信(オンライン)
※ 総会・招待講演とも,会場に入るには春季研究発表会事前登録がされていることが必要になります
講演の概要
ヨーロッパ域内だけでなく日本も含む広範な地域で,外国語教育の関係者にインパクトを与えた「ヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)」(2001/日本語版は2004)が欧州評議会CoEから発表されて20年になるが,2018年にはその補遺版「CEFR−CV」も発表され,弛まぬ歩みを目の当たりにしている.発表者は(大阪大学外国語学部有志グループとして)補遺版の作成プロジェクトに関わる機会も得た.<https://rm.coe.int/cefr-companion-volume-with-new-descriptors-2018/1680787989>
本講演では,「CEFR」と「CEFR−CV」の理念とその目指すところを確認した上で,補遺版「CEFR−CV」について,少し踏み込んで見てみたい.
補遺版では,CEFRにはなかった点や議論や説明が不十分だと思われた点を補足しているが,特にMediation(「仲介」「媒介」または「架橋」と訳せるが,便宜上「媒介能力」と訳しておく.)について,議論したい.これは,複言語能力に限定せず複文化能力にも大きく関わる重要な概念であり,従来の狭い意味での「語学」には収まりきらない視野で「外国語教育」を捉えることの有効性や可能性を示してくれ,図らずも「移動の世紀ならぬ変化の時代」となった現在の外国語教育を考え直すための道具としても,有益かもしれない.
日本の外国語・言語教育へのインパクトについて考えてみると,2019年以降の新型コロナ感染症の地球規模での拡大に伴い,外国語教育関係者も,教室内の活動だけを考えていれば良いのではなく,目を外に向ける必要性に直面している.人や物の移動がグローバルに展開していた2019年までの時期の後に,移動の制限が否応なくなされ,高等教育機関でも従来のような留学制度をも再考する必要に迫られ,オンライン技術の目覚ましい進展も含め,教育現場にも世界規模で激震が走っているのではないだろうか.「CEFR」も「CEFR−CV」も,ドイツ語教育,日本語教育といった言語によらず,言語教育関係者の「共通メタ言語」としての役割があり,それを活用しない手はないだろう.
CEFRのインパクトが,コロナ禍でも目に見える形で進んでいる事例として,「日本語教育推進法」(2019)の制定を根拠法として,(第二言語あるいは外国語としての)日本語教育の進展・拡充を進めるために,文化庁国語課が「CEFR」を参照した「日本語教育の参照枠」を発表したことにも触れておきたい.(文化庁 2021 <https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/93463101.html>)
講演者の略歴および業績
大阪大学名誉教授,ケルン大学客員研究員.専門は,言語社会学,日本語教育.永年,留学生教育に関わる.最近の主な研究テーマは,移民に対する言語教育とヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)」(2001)とその増補版CEFR-CV(Companion Volume)(2018,2020)の理念と実践.現在,科研プロジェクトとして「「移動の世紀」の言語教育を考える ―移民統合とCEFR-CVの基礎研究―」を遂行中.最近の主な論文に,「グローバル化がローカルな日本語教育に与える影響について」ヨーロッパ日本語教師会AJE(2019年),「継承語教育とアイデンティティ」在日本韓国人教育研究大会予稿集(2019年8月)がある.